第8章 セレスタイトの歌声
「アレスッ!!」
受け身をとってすぐさま体勢を立て直したイオスは、アレスの肩を抱いて上体を起こすが…
「う、う…っ」
頭を打ったのか、アレスはぐったりとして意識を朦朧とさせていた。
「…期待したんですが…出来損ないの乙女でしたね」
そもそも覚醒すらしていない。
自分の役目にも気付かず、力を持て余して腐らしている。
「私は無能な輩が大嫌いなので、ここで殺してあげましょう」
この先、生きていたって、無駄でしょう?
アレスの脳裏に、レイムによる死の宣告が微かに届いた。彼女は体から力を抜く。──生きる価値などないのだと、死を受け入れて望みすらした。
「──アレス、駄目だっ!」
耳がイオスの怒鳴りで痺れる。
まるで、死ぬなと、決していらない存在ではないと言外に抱き締めるその体温に、アレスの目尻が濡れた。