第8章 セレスタイトの歌声
しかし、いつまでもそうしている訳にはいかない。
「─一つ覚えで小賢しいっ、この鉄クズが!」
レイムの放った召喚術が、ゼルフィルドの巨体を吹き飛ばす。
イオスは、紫水晶のように輝くその瞳を覗き込んで言った。
「一緒に逃げよう」
「私、ルヴァイドを置いて行けない…」
いやいやと、アレスは赤子のように首を振る。
「聞くんだ、アレス」
柔らかい髪の毛を撫でながら、怯えさせないように優しく微笑んだ。
「ルヴァイド様にとって大切なものは、僕にとっても大事なものだ…だから僕に君を守らせてくれ。良いね?」
イオスの言葉に、アレスはまた泣いた。
返事を待たず、その細腕を掴んで無理矢理に立たせたイオスは、すぐさまアレスを背におぶる。
「──逃がしませんよ」
背後にレイムの影が伸びた。
「…クタバリヤガレ、コノ外道ガァッ!!」
二人に近付けさせまいと、黒煙を上げながらゼルフィルドの銃口がレイムの急所を狙った。