第8章 セレスタイトの歌声
「常々馬鹿だと思ってましたが、ここまでとは」
上司が馬鹿なら部下も馬鹿ですね。
「…標的照準完了─ロックオン─自動追尾機能開始─ホーミングシステム、スタート─」
レイムの挑発は、機械兵士には何の意味も成さない。ゼルフィルドは、手にした自動銃で標的に攻撃を仕掛けると息つく間もない弾幕を展開する。
その隙にイオスは、アレスの下に駆け付ける。
靴がルヴァイドの流した赤に染まる。
「ルヴァイド様…」
呼び掛けにもピクリとも反応を示さない。
血に濡れたアレスが、ゆらりと面を上げた。
「イオス…ルヴァイドが…ルヴァイドが…」
……死んじゃった……
「…アレスのせいじゃない」
あまりに悲痛なその表情に、イオスはその腕の中に彼女を抱き込んだ。
「ルヴァイド様は、アレスに救われていた。それは嘘じゃない」
ガタガタと震え、恐怖と絶望に歯を食いしばるアレス。
正直、アレスが居なければ発狂していたのは僕自身だと、イオスは彼女を強く抱きしめて共に泣いた。