第8章 セレスタイトの歌声
「…オ前ハ、アレスト共ニ逃ゲロ」
「…ゼルフィルドはどうするつもりだ…」
自決の意志を感じ取り、イオスの声が掠れる。
「我ノ装甲ナラバ、多少ノ攻撃ハ防ゲル。…一矢報イテヤラネバ気ガ済マナイ」
「お前…いつの間にか人間臭くなって…まるで騎士じゃないか」
最初はコミュニケーションを取ることすら難しかった機械兵士が、人間的思考を築き上げ、将の仇討ちに単騎で挑むという。
イオスはゼルフィルドの成長を喜ぶと共に、ここで散ろうとするその決意に涙を止めることが出来なかった。
「…アレスヲ頼ムゾ」
死んだとしても、ルヴァイドの愛した女性だ。
傷一つつけようものなら、腹心としての名が廃るぞ。
「…言われなくても、守ってやるさ」
イオスはごしごしと涙を拭うと、未だルヴァイドにすがりついて泣くアレスを見やる。
これまで幾度とコンビを組んできた相棒と呼吸を合わせると、ゼルフィルドと十字を描いて駆け出した。