第8章 セレスタイトの歌声
マグナの呼びかけに、はっとバルレルは目の焦点を元に戻す。──しかし、マグナの横に儚く佇むアレスの気配が消えない。
「幻覚…じゃない?」
「どうしたんだよ、バルレル…まさか酔ってるんじゃないだろうな」
昼間から酒気を帯びていた前科のある小悪魔を、マグナは半眼で見下ろす。
しかしバルレルは、そんな召喚主の嫌味に構うことなく霞むアレスに手を伸ばした。
(…まさか、死んだのか?)
亡魂になって、オレの前に姿を現したのか。
伸ばした指先が、泣き崩れるアレスの頭に触れる。暖かい。生きている。
「──んだよ、また泣いてんのか…」
バルレルはすり抜けたアレスの気配を手に握り締め、眼光鋭くマグナを見上げると口早に命令した。
「オレは今からアレスの所に行く」
「へっ?……えぇっ!?」
「アレスがピンチだ」