第8章 セレスタイトの歌声
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今夜ゼラムを発つと決めたマグナは、護衛獣のバルレルを伴って消耗品の買い出しに街に出ていた。
「アメルのおばあさんが住んでる村まで行くとして、次いつ補充出来るか分かんないからな…多めに買っといても怒られないだろ…」
預かった財布の中身を確認しながら、頭の中に買い物リストを広げていくマグナ。
「なぁ、解毒の薬もいると思うか?」
隣の悪魔に話しかければ、バルレルは呑気にあくびをかみ殺している。
「敵も本気を出してくるとしたら、毒や目潰しぐらいしてくんだろうなぁ」
「じゃあ目薬も買っておくか…」
目薬で対処出来れば良いがなと、心の中だけでツッこむバルレル。
徐に空を見上げれば快晴で、今夜の空には月が煌々と照りそうだ。
(普通、明るい月夜は避けるもんだがよ)
所詮は今まで荒事なんぞ生活圏外だった人間どもには、天候まで逃亡計画に考慮する余裕は無いに違いない。