第8章 セレスタイトの歌声
あまりに非道な台詞に、兵士達も歯を食いしばって将の仇を取ろうと武器を構える。
「身の程を弁えなさい、愚かな人間ども」
レイムは武器を手にした者達を一瞥すると、大きく腕を広げた。膨れ上がる魔力に、アレスは叫んだ。
「──みんな逃げてっ!!」
しかしアレスの声は間に合わず、魔力の塊を当てられた兵士達は鮮血を迸らせて倒れていく。
続く断末魔の悲鳴に、アレスは現実を見つめられず頭を抱えてうずくまるしかない。
「もう止めて…止めてよぉ…っ」
「ふはははははっ!!!」
レイムの嘲笑が脳内に木霊する。
自分は何て無力なんだろうと、アレスは絶望した。そんなアレスに追い討ちを掛けるかのように、レイムは彼女の髪を掴んで顔を上げさせる。
そして、涙に濡れる紫の瞳を愛おしそうに覗き込んだ。
「ルヴァイドが今ここで死ぬ事になったのは、貴女のせいですよ」
「…私の、せい…?」
可哀想に、アレスの緊張の糸は千切れる寸前だった。
「貴女がルヴァイドを拐かすような真似をしなければ…任務の正当性を問うような駒は、我がデグレアには必要ないのです」
貴女がルヴァイドを死に導いたのですよ──
「そうでしょう?ねぇアレス?」