第8章 セレスタイトの歌声
「無駄ですよ」
イオスを体術で弾き飛ばしたレイムが、竪琴を爪弾く召喚獣を嘲笑う。
「その短刀は、悪魔が鍛え上げた呪いの品です。精霊ごときの加護が適うはずもない」
レイムの言葉を裏付けるように、吹き出す血は勢いを変えない。このままでは、訪れるであろう最悪の事態に、アレスは恐怖を忘れて怒りを露わにした。
「ルヴァイドが何をしたって言うのよ!」
ルヴァイドはあんたの仲間じゃないの!?
アレスの怒号に、レイムはフフフと不吉な嗤いを漏らす。
「貴女がゲームに勝ったからですよ」
「……!?」
予想だにしない答えに、アレスの眼が限界まで見開かれた。
「私は貴女にルヴァイドと恋仲になれば助けてやろうと示唆しました。しかし、それはルヴァイドの死を伴うものでもあったのです」
「何ですって!?」
「あれ、私言ってませんでしたっけ。これはこれは、大変失礼致しました」
いけしゃあしゃあと言う男に、アレスの中で怒りが飽和する。