第8章 セレスタイトの歌声
突き出た先端から服が赤く滲んでいく。それが血とナイフによるものだと気付いて、アレスは戦慄した。
「…あぁ…どうし…て…っ」
「ルヴァイド様ぁ!?」
事態を認識したイオスが、悲鳴混じりに上司の名を呼ぶ。
ルヴァイドは辛うじて自立しているものの、口から大量に吐血した。
レイムは突き立てたナイフを持ち替えて、鳩尾から心臓へと向けて刃を捻らせる。
「ぐがぁああっ!!」
ルヴァイドが痛みに喘ぐ。
内部の異常を察知したゼルフィルドが、幕外からその天幕を力任せに取り払った。
「将!?」
流石の機械兵士は状況判断に迷う事なく、レイムの足元に照準を向けるとすぐさま発砲した。が、相手は予想していたかのように難なく銃弾を回避。
レイムが後退したことによりバランスを崩したルヴァイドの体が、ぐらりと前に傾く。受け止めたアレスの腕に、べっとりと生暖かい血が滴った。