第8章 セレスタイトの歌声
数秒の沈黙の後に、ルヴァイドは重苦しく口を開く。
「俺を利用したのか」
生き残る為だけに、愛のない戯れ言で俺に近付いたのか。
「違うっ!」
アレスが必死に否定をしても、ルヴァイドの心に滲んだ猜疑心が彼の心を凍り付かせていく。
「お前は…あの日の俺を許すと言ってくれた…それも嘘だったのか」
「ルヴァイド、この男の話を聞かないで!私を信じて!!」
端から見れば恋人同士の言い合いでも、レイムの存在がただの痴話喧嘩で終わらせない状況を作り出していた。
これ以上拗らせる訳にはいかないと判断したイオスが、ルヴァイドの怒りを宥めようと仲裁に入ろうとした──その時。
「──!?」
ルヴァイドの背中に、熱い衝撃が走った。
「レイム、貴様何を!?」
イオスの立ち位置からでは、レイムがルヴァイドの背中に抱きついたようにしか見えない。
しかしアレスの目には、ルヴァイドの身体から鈍色の尖形状の物が服を突き破って出てた様子が映る。
ルヴァイドの身に何が起こったのか、ルヴァイド自身でさえもすぐに理解する事は出来なかった。