第8章 セレスタイトの歌声
「貴方は…どうしてそんなに私の一族について詳しいの?」
そもそもユメノの一族は聖王家に庇護され、表立っては生きていない。
それなのに能力にここまで詳しいのは同じ血を分かつ者か、もしくは──。
「昔からユメノを知ってるの…?」
ユメノ一族は確かに古い血筋であり、レイムの言うとおり【エルゴの王】の時代に隆盛していたと伝聞している。
その後は時代を追うごとに先細り、直系でユメノを名乗るのはアレスのみだ。
絶える寸前のユメノ一族を、その当主よりも詳しく知るこの男は何者なのか。
不吉な予感が頭を過ぎる。
緊張から、口の中がカラカラに渇いていた。
「…強いて言うなら、貴女が何も知らないのは私のせい…とでも言いましょうか」
正確には、貴女の一族が、ですけどね。
レイムの囁きに、アレスの瞳が大きく揺れる。
一歩一歩と男の接近を許し、彼のたおやかな指がアレスの頬に伸びた瞬間。
「アレスに触れることは、この俺が許さん」