第8章 セレスタイトの歌声
「マグナさんがね、仲間割れして出て行った女性の話をしてくれまして。名前や職業、出て行った経緯まで詳しく話して下さいました」
アレスは胸中で舌打ちする。
マグナの兄弟子ではないが、馬鹿かと怒鳴りつけてやりたい衝動に駆られた。
「それに昨日、この付近で感じた異常な魔力の高まり…あれは通常の魔力の流れではありませんでした。あれほどの力を駆使できるのは、王─エルゴ─に縁が有る者に他なりません」
知ってましたか?
貴女の一族は今でこそ鉱物鑑定士を生業としているが、【エルゴの王】の時代にはこのリィンバウムの護人をしていたのですよ。
「貴女が石や大地の声を聞けるというのも、先祖が守護者だった証なんです」
明かされる話は、ルヴァイド達には現実味に乏しく信憑性の無いものの様に聞こえる。
しかしアレスには、まるで服を一枚ずつ脱がされて無防備な自分をさらけ出されるような恐怖心を感じていた。
自分の聞き及ばぬ話をされるとき、人間は大概心に不安感を滲ませるものだと、レイムは冷や汗をかいているアレスを冷静に見つめる。