第8章 セレスタイトの歌声
「時が満ちたのですよ」
世界の流れが変わり、聖女は目覚めた。
「役者が揃った以上、開演させなければ観客に失礼です」
「…何の事だ?」
「ここで出会ったのも運命と言うことですよ…出ていらっしゃい、鉱物鑑定士のお嬢さん」
いや、大地の王─エルゴ─に寵愛された乙女よ。
自分の事を言われていると理解するのに、アレスは数秒の時間を要してしまった。が、頭で考えるよりも先に体が動いた。
「…アレスっ!?」
勢いよく飛び込んできたアレスに、ルヴァイドは思わず声を上げる。
彼女の表情が、初めて見る鬼気迫る表情だったからだ。
「…貴方、一体私の何を知ってるの!?」
アレスはズボンのポケットに後ろ手に手を入れて、サモンナイト石を握りしめる。
戦闘態勢で身構える彼女に、レイムはくつくつと笑った。
「リィンバウムを守護してきた古き一族の血が、貴女にも流れているのですよ」
可哀想に…貴女は何も知らないのですね。
憐憫の眼差しを向けられて、アレスの勢いが萎んでいく。