第8章 セレスタイトの歌声
身に迫る恐怖に身を震わせるアレスに助け舟を出すように、ゼルフィルドが適当にでっち上げた理由を説明する。
「我ガ監視役ヲ仰セ遣ッテイル」
「何とそれは大仰な」
小娘一人に機械兵士一機で監視をするとは。
「そこまでの特待は、彼女が只者でないからですか?それとも──」
私から彼女を守る為でしょうか。
挑発的な言動に、機械兵士は間合いを一歩積めた。カメラアイを鈍く光らせて、銀髪の優男を睨みつける。
「…早ク情報ヲ伝エニ行ケ」
「言われなくてもそうしますとも。…あなたも随分彼に似てきたものですね」
アレスがゼルフィルドの駆体の隙間からそっと覗き見れば、レイムは柔らかそうな銀髪を揺らしクスクスと笑っている。
だが次の瞬間、セレナイトのような薄い色の瞳と目が合ってしまった。
血の気が引くような寒気に、足元から崩れ落ちそうになる。
「大丈夫ですか」
ゼルフィルドの注意がアレスに向いたその一瞬で、レイムと呼ばれるその男はアレスのか細い腕を掴んだ。
「…ひ…っ」
掴む腕のあまりの冷たさに、思わずアレスは悲鳴にならない呼吸音を漏らす。
彼女を守るように、ゼルフィルドは力づくでレイムを引き離すとアレスをその腕に抱え上げた。