第8章 セレスタイトの歌声
「ワザワザコンナ所マデ……何ノ用ダ、れいむ?」
聞き覚えのある名に、アレスの身体が硬くなる。
ゼルフィルドが睨みつける方を見れば、木陰から姿を現したのはいつぞやの顧問召喚師。
「通りかかったら素敵な歌声が聞こえたものですから。まさか貴女だったとは」
お久しぶりですね、お嬢さん。
淡々と微笑む顔が逆に薄気味悪くて、アレスは思わずゼルフィルドの背後に逃げ込んだ。
「将ナラ陣営デ作戦会議中ダ」
「それはちょうど良かった。私はルヴァイドに、聖女一行が移動を開始するという情報を持って来たのですよ」
「ソレハ本当カ?」
「生憎私はあなた達と違って有能ですから。本人達から直接聞き出したのです」
なんて事だ。
旅団の顧問召喚師が、何食わぬ顔でアメル達に接触しているとは──これでは情報が筒抜けで、アメル達は先回りされて捕まってしまう。
想像していなかった事態に、アレスの顔が青ざめた。