第7章 クリソプレーズの囁き
じっと見つめて来る深紅の瞳に、恥じらいに揺れる紫色の瞳。
アレスはルヴァイドの瞳の奥に、僅かに熱を感じてその体を押し返した。
「…ルヴァイド、ダメよ…」
「口付けぐらいは良いだろう?」
返事を待つ気もないのか、早急に感じたルヴァイドの吐息に顔を背けるアレス。その耳は真っ赤で、可哀想なくらいにオロオロとしていた。
「止めてって言ったら、止めてくれるの?」
「……善処する」
「善処じゃダメなの。私…その…そういうこと、し、したことが…ないから…」
ルヴァイドはモテるだろうから、さぞご経験も豊富なんでしょうけど。
「…意外だな」
その容姿端麗な身で、まだ生娘だったとは。
ルヴァイドの呟きを卑屈に受け取ったアレスは、「だって相手が居なかったんだもの」とブツブツ言いながら落ち込んでいる。
「ならば、大切にしないとな」
アレスの前髪を指で流しながら、ルヴァイドは優しく言った。