第7章 クリソプレーズの囁き
破顔するアレスに釣られるようにして、ルヴァイドも口元を緩めた。
しかし、すぐに真顔に戻ると、わずかに言い渋る様子で問い掛ける。
「…一つ聞いて良いか?」
夜の山に独りでいたこと。
何かしらアレスにとっての不都合があって、そのような危険を冒さなければならなかったのだろう。
それは言いにくい事であろうが、ルヴァイドは聞いておくべき事項だと認識していた。
アレスを見やれば、毛布で顔を覆い隠している。
やはり言いたくない事があったのかと、ルヴァイドの目つきが鋭くなった。
「……嘘がバレたの」
毛布越しでもその視線を感じたのかは知れないが、アレスはぽつりぽつりと話し始める。
「ゼラムで聖女達に顔を見られて帰って来れなくなった時、もちろん怪しまれたのよ。何でそんなに身綺麗なのかって。……旅団の連中と繋がってるんじゃないかって。その時、とっさに嘘をついたの」
旅団とは何の関わりもないって。
「……本当の事を言って、嫌われたくなくなかったの」
今思えば、人の良い彼らに自分を受け入れて貰いたかったのだ。