第7章 クリソプレーズの囁き
そして、アレスの頬を濡らす涙を、ささくれ立った手でゆっくりと拭った。
「俺は今、すごく嬉しい」
元々感情を表現する事が得意ではないルヴァイドだったが、落ち込んでいるアレスを励ましたくて慎重に言葉を紡いでいく。
「お前がこうして俺の手の届くところにいる。…それがどんなに心を穏やかにする事か…お前は剣のようだな」
その言葉に、アレスの表情は怪訝そのものだ。
ルヴァイドは、言葉を間違えたようだ…と一つ咳払いをし、頭を掻きながら難しい顔で言い直した。
「つまりだな…俺は騎士で、剣が手元にないと落ち着かない。お前は俺の半身ともいえる剣と…」
同じくらい大切な存在なのだ。
流石のルヴァイドも、面と向かって言うのには照れがあったのか、言葉尻を言う顔は明後日の方向を向いていた。
アレスはそんな彼の様子に、やっと本来の笑顔を零す。
「それの口説き文句は、女にはピンと来ないわ」
勉強し直してね、と生意気を言っても嬉しさを隠すことは出来ていなかった。