第7章 クリソプレーズの囁き
手桶と汚れ物を抱えてテントを出ようとしたところで、召喚術の光に輝く上司の瞳と目が合う。
(きっとルヴァイド様のお心を救えるのはアレスだけだ。そしてアレスを救えるのも…)
イオスは小さく頭を下げると、そのまま天幕を後にした。
それと同時に、プラーマも役目を終えて元いた世界に帰って行く。
「うん、かなり楽になったわ。ありがとうルヴァイド」
先程より明らかに顔色の良くなったアレスは、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「…まったく、お前の無茶は心臓に悪い」
疲れた顔でサモンナイト石を机にしまう。
アレスはその背中にそっと、すがりついた。
「…私のこと、嫌いになった?」
ギュッとルヴァイドの服を握りしめる。
大きな背中に耳を当て、心臓の鼓動に耳を澄ませた──その瞬間に、振り返ったルヴァイドの腕の中に収まる。
「そんな訳ないだろう」
どれだけ心配したと思っているんだ。