第7章 クリソプレーズの囁き
『小さき声を聴くためには、本当の静寂を知らねばならぬ』
ユメノ一族の当主で厳格だった父。
一人娘の私を鉱物鑑定士に育て上げるべく、人世から遠ざけて孤独を強いてきた。それが修行だと言われれば反論も出来ず……私はひたすら闇に耐えた。
早く石の声が聴こえるようになりたい。
そうすれば母に会える。父も褒めてくれる。
その一心で、ひたすら孤独に耐えたというのに。
外に出てみれば母は病に死に、父は召喚術の暴発で命を落としていたのだ。
それ以来、一門の者達に世話になりながらも新当主として鉱物鑑定士の仕事をこなしてきた。…が、心にはいつも飢餓感があった。
人が恋しかったのだ。
仕事で近付いてくる人間は私欲にまみれた者ばかりで、【私自身】を見てくれる者などいない。
石の声が聞こえなければ、私の存在価値など──
(……そっか。そうだったんだ)
私と同じ気持ちを、聖女のアメルは抱えていた。だから放っておけなかった。
私の中の救済願望がアメルに投影されていて──それが叶わず、アメル達から見放されてしまった事が酷く悲しかったのだ。