第7章 クリソプレーズの囁き
やけに饒舌なアレスを、イオスが怪訝そうに見下ろす。
横顔を盗み見れば、取り繕ったような笑顔。
何かを必死に押し殺して笑うアレスの姿が、イオスの目には痛々しく見えた。
ルヴァイドもイオスと同じ事を感じ取っているのか、ジッとアレスを見つめていた。
…が、何も言わず、机の引き出しからサモナイト石の入った巾着を取り出す。
そこから一つ、サプレスのサモナイト石を掴むと、アレスの前に掲げた。
「…誓約の下にルヴァイドが命じる。癒やしの聖母よ、苦しむ者を救いたまえ」
低い声で響く、ルヴァイドの喚び声。
アレスの目に虹色の光があふれ、その中からサプレスに暮らす聖母プラーマが姿を現した。ルヴァイドの姿がプラーマの陰に霞む。
アレスは降り注ぐ暖かな光に目を閉じた。
癒やしの力が、全身を包み込む。
こうして誰かに回復してもらう事など、いつぶりだろうか。もう分からなくなるほど、私はずっと独りだった。