第7章 クリソプレーズの囁き
あの時──
地に倒されたあの時、脳裏に響いた不思議な声。
自らを『大地のエルゴ』と名乗ったあの声に体を乗っ取られたかのように、意志に反して召喚術を発動しようとした。
鉱物鑑定士の一族として〖石の声〗は聞こえるが、あの声もその一種なのだろうか。
そもそも石の気配はかすかなもので、あそこまではっきりと能動的に呼びかけてきたのは初めてだ。……石とは別の何かだろうか。
「…いっ!?」
「す、すまない」
髪を強く引っ張られ、その痛みに思考が中断する。
それと同時にルヴァイドがテントの入り口を開けた。
「具合はどうだ、アレス?」
意識がはっきりしてきた今、ようやくルヴァイドに会うことが出来た安心感が自然と頬を緩ませる。
「ルヴァイドを見たら、熱も下がったみたいよ」
ルヴァイドってば目が覚めるような美人さんだし。まぁ、この隣の麗人には負けるけどね。……って、痛い!
アレスの言葉に、イオスが髪を引っ張って反論する。
「その調子なら、回復術も必要ないな」
「いやだな~お願いしますよ」
アレスは子供のように足を揺らしながら、ルヴァイドの召喚術をねだる。