第7章 クリソプレーズの囁き
組んだ掌を見つめながらアメルは言った。
「まぁあたしの話は置いといて…ロッカがそんなに悩むのは、本当はアレスさんに出て行って欲しくなかったんでしょ?」
「どうかな。彼女が居たら居たで不信感だけが募るだろうし、僕はアメルが言うとおり融通の利かない人間だからアレスを許せないと思うよ」
「うそつき」
その冷めた声色に思わずロッカは怯む。
かつてこの義理の妹が、ここまで突っかかってきた事があっただろうか。
アメルが精神的に強くなって自分を出せるようになったのは喜ばしいが、今は勘弁して欲しいと思う。
アメルはそんなロッカの心境を知ってか知らずか、視線を床に落として話を続けた。
「今のロッカは、まだご両親が生きてた頃の幼いロッカみたい」
その言葉に、行商をしていて途中で死んだ両親の顔が頭によぎる。
「…それはどういう意味だい?」
「ロッカはお父さんとお母さんが仕事に出る時、いつも泣いてたよね」