第7章 クリソプレーズの囁き
アメルがロッカの前に冷えた水を置いた。
「…灯り、点けようか?」
「いや、良いよ。今酷い顔してると思うから」
見られたくないんだと、ロッカは自嘲する。
アメルはそんな兄の隣に座り、薄暗い中その表情を探ろうと横顔を見つめた。
「……後悔してるんだよね」
小さい声で、だが断定的に言ったアメルに、ロッカは思わず顔を上げた。
「心を読んだのかい?」
「違うよ。ロッカがわかりやす過ぎるの」
それに、あたしが心を読むのを好き好んでない事は知ってるでしょ…と、アメルは頬を膨らませる。
ロッカは一口水を含み、ぽつりと呟いた。
「……僕は間違っていたのだろうか?」
その問い掛けに、アメルは普段の冷静さを欠いた兄の様子を思い出した。
「…ロッカは間違った事は言ってないと思うよ。ただ、アレスさんに対する物言いが、私情が大分入ってたなぁとは思ったけど」