第6章 アイオライトの涙
男の一人が、アレスの形成していた召喚術の殺気に気付いたのか、顔を上げた。目が合う。
「逃げて…」
アレスは、詠唱の間に思わず嘆願した。
「頼む…殺さないでくれ…」
この場を包む尋常ではない狂気に、男は涙する。
その様子に、自らを大地のエルゴと名乗る声は、アレスの脳内に笑い声を木霊させた。
〖ふはははは!!それで良い!!〗
〖死して己の罪を償うが良い〗
アレスは歯を食いしばって詠唱の完成をすんでの所で押し留める。そして絶叫した。
「私は人殺しなんてしたくないのよぉ!!!」
パンッ!!パンッ!!パンッ!!
アレスの叫びに呼応するように、乾いた銃声が数発鳴った。
的確に頭を打ち抜かれた男たちが、それぞれ流した血でお互いを赤く染めていく。
驚きに詠唱が止まり、アレスの召喚術が霧散した。