第6章 アイオライトの涙
しばらくアレスの啜り泣く声が聞こえる中、バルレルは無言で地面を見つめていた。
自分でも、自分の行動がわからない。
何故ニンゲンのオンナにここまでしてやるのか。ニンゲンは大嫌いなのに。
「…テメェは特別だってことだな」
「え?」
ぽつりと、自分に言い聞かせるように言った。
アレスはバルレルの独り言に驚いて顔を上げる。
「たまには顔見せついでに酒を持って来いよな」
ニヤッと鋭い犬歯を見せて笑うその態度がバルレルなりの気遣いだと知って、アレスは精一杯の感謝を込めて頷いた。
「ありがとう、バルレル!大好きよ」
柔らかな頬に口付ければ、元から逆立っている髪の毛を更に逆立ててバルレルが仰け反った。
「気色悪ぃことすんなよ!!」
「そのリアクションはちょっと傷付くなぁ」