第6章 アイオライトの涙
頬にまだ涙の跡があったが、アレスは笑っていた。
それに反比例するように顔をしかめるのは悪魔の習性かも知れない。
「じゃあ、そろそろ行くわね」
立ち上がりスカートの裾を払うと、アレスはバルレルに手を差し出した。
「傷は大丈夫?」
「止血はしたし、こんくらい痛くもねーよ」
「石、大事にするから」
「おぅ」
アレスは門を出て、バルレルが屋敷に入るまで手を振って見送った。
今まで独りで旅をしていた分、仲間たちの優しさが名残惜しかったが、いつまでもこうしている訳にはいかない。
ぽつりと、雨粒が鼻に当たった。いよいよ降りだしたようだ。
アレスは気持ちに踏ん切りをつけると、屋敷に背を向けて歩き出したのだった。
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