第6章 アイオライトの涙
アレスの脳裏には、銀髪の顧問召喚師の姿が浮かんでいた。
「そいつはルヴァイドの心を弄ぶのが好きとか…魂の甘露とか…悪魔みたいな事を言っていたわ」
バルレルはふむ、と腕を組んで思案する。
やはり黒騎士の胸にかかる靄は、同族の仕業だろう。アレスにしてもしかり。
彼はズボンのポケットから折り畳み式のナイフを取り出すと、刃を立ち上げて自らの手に当てた。
「バルレル!?」
突然、手のひらをナイフで切りつけたバルレルにアレスは目を見開く。
当の小悪魔は痛みを微塵も感じていないかの様子で、滴る鮮血を眺めてはそれに魔力を集め始めた。
血が手から滴るそばから凝縮し、小さな固形物と化していく。
しばらくすると、血は止まり、バルレルの手には親指大の紅いの石ような物が握られていた。