第6章 アイオライトの涙
見送りに来てくれたのは、最もそれが似合わないバルレルだった。
「どうしたの?」
思わずアレスは尋ねてしまう。
彼は鉤状の尻尾をユラユラ揺らしながら、何故か不機嫌そうに口を尖らせて言った。
「アイツらの所に行くのかよ?」
アイツらと言うのは、黒の旅団の事だろう。
アレスは小さく頷いた。
「…やらなくちゃいけないことがあってね」
アレスの表情が固くなるのを、バルレルは見逃さなかった。
目を凝らすと、彼女の胸元の靄が昼間よりも面積を広めている。
「…アイツらの仲間に、悪魔はいるか?」
バルレルは、懸念をアレスに問う。
「悪魔の姿はなかったけど…」
小首を傾げて言うアレスの表情は、何か引っ掛かるものがあることを伝えていた。
「悪魔みたいな人間がいたわ」