第5章 ラリマーの調和
しかし、アメルの口からはアレスの予想だにしない答えが出た。
「お爺さんは村に戻りました」
「…戻ったって何も…」
「亡骸を弔うんだって言って聞かなくて」
怪我もしていたし、残党がいたりしたら危ないって皆で言って止めたんですけど…
「…でもアグラお爺さん一人でするには、骨の折れる仕事よ…?」
「村人達の遺体を獣に食い荒らさせたくないから、すぐに埋葬したいとの事でした」
「そう…」
レルムの村には聖女の奇跡を頼って、大勢の人間が滞在し、そのまま帰らぬ人になった。
確かに後処理を急がなければ、死骸が食われたり感染症が発生して土地が穢れてしまうだろう。
「…落ち着いたら一度、様子を見に行きましょうか」
アメルの元気な顔を見せることが、アグラバインの一番の糧になる。