第5章 ラリマーの調和
「あたしが捕まったら、家族が悲しみますから…」
あたしの存在でたくさんの人が傷付くのに…
家族とわが身の保身に走るあたしは、聖女失格ですよね…
「別に、私はそれでいいと思うわよ」
自己犠牲の精神で己の人生全てを失うなんて、馬鹿馬鹿しい。
残された人達にそれこそ自己満足を押し付けて逝くようで、私は好きじゃない。
「アメルは何も悪くない。アメルはアメルよ。貴女が自分を信じなきゃ、守る私達は力一杯戦えない」
「アレスさん…」
揚げ物を終了させたアメルは、コンロの火を止めて、聞くか聞くまいか迷っていた問いを口にする。
「アレスさんは、どうしてあたしを守ってくれるんですか?」
アレスは冷蔵庫の扉を閉めて聖女に向き直った。一度、手にした"ミソ"に目をやり静かに口を開く。