第5章 ラリマーの調和
しかし、他人のプライバシーに抵触する能力のせいか、アメルは申し訳なさそうに俯いていた。
「私の場合は、心を読むというのとは違うかなぁ」
再び手を動かし、アレスは鍋に水を汲みながら言う。
「私は石の声に敏感なだけ。石は持ち主の気持ちを吸収するの」
セレスタイトの浄化をした時に、強い感情が伝わってきたのよ。
「哀しみと不安となにより自責の念。あなたの強張った顔に、たぶん自ら捕まりに行くんじゃないかなと思ったのよね」
「すごいですね…」
アレスの推理力に、素直に感心するアメル。
「でも、もう捕まりに行こうなんて思ってないでしょ?」
紫水晶のように光る瞳にジッと見据えられていて、アメルは僅かに身構えた。
アレスの瞳は、聖女の力以上に心を見透かしてきそうだからだ。