第5章 ラリマーの調和
野菜室から食材を取り出し、手早く包丁で切り始める。
その手際の良さに、本当に料理が好きなんだとアメルは感心した。
そしてふと、あることを思い出した。
「ねぇアレスさん…?」
「なに?」
トントンとリズムを乱さずアレスは返事をする。
「どうしてあたしが、あの黒い鎧の人達にその…捕まりに行こうとしてたことが分かったんですか?」
アレスさんも、癒しの力はなくても、人の心を覗けるんですか?
「え、なに、アメルは他人の心が読めるの?」
アレスは初耳だったため、思わず手を止めて聞き返した。
「読めるというか、癒しの力を使うとその人の心の中まで見えてしまって…不可抗力です」
「精神的な傷を癒すことによって、肉体までも癒してしまうということかしら」
心底不思議な力である。