第5章 ラリマーの調和
しかしアレスは引き下がらなかった。
「誰も傷付けたくない…でもどうすれば良いか、分からないの…」
国を相手にするには、私では圧倒的に力不足だ。
「…悪魔を頼るって事はどういう事か、分かってんだろうな?」
バルレルの声が、一つ低くなる。
アレスはごくりと唾を飲み込んだ。
「取引、って事でしょう?」
「話が早いな」
バルレルはニヤリと口角を上げ、不安げなアレスの瞳を見据えて言った。
「竜殺しが手に入ったら、俺に寄越しな」
その言葉にアレスの思考が一旦停止する。
はて竜殺しとは…ちらりと横目で転がる酒瓶を見れば、茶色の一升瓶に[竜殺し]と金色の字が刻印されていた。
「あの…バルレル君?」
「様をつけろよ、様を」
「…バルレル様は竜殺しが好きなの…?」