第5章 ラリマーの調和
「へぇ。悪魔は風邪ひかないんだ」
初めて知ったと、表情を緩ませるアレスの顔を、バルレルは怪訝な顔付きで睨み上げる。
「バルレル君はお酒が好きなの?」
悪魔は悪魔でも、まだ頬に柔らかさを感じさせるバルレルの睨みにアレスは負けることはない。
今までろくに話もしなかった小悪魔を前にして、いい機会だと話題を投げ掛けた。
しかしバルレルはふんと鼻を鳴らしただけで、素早く立ち上がるとアレスに背を向ける。
しかし思いもしていなかった感覚に、勢いよく振り返っては彼女を怒鳴り付けた。
「何しやがんだっ!?」
「いや、君のその尻尾はどんな感触なのかなと思って…」
アレスはバルレルの鉤のような尻尾に興味を持って触れてみたが、案の定怒りを買ってしまい直ぐに手を離した。