第5章 ラリマーの調和
ふと、アレスの目の端に赤色が入った。
そっと近づいて見てみれば、テラスの塀に背中を預け、足を床に投げ出している小悪魔の赤い頭がそこにあった。
俯いていて表情は見えないが、少年の脇には酒の空き瓶が数本転がっている。
どうやら酔ってそのまま寝てしまったようだ。
アレスは起こすかどうか迷ったものの、このままでは風邪を引くと思い、細い肩に手を置いた。
「…バルレル君」
「…んぁ?」
細かく揺すれば、のっそりと顔を上げて深紅の瞳が瞼を開けた。
こんな間近で悪魔の瞳を覗き込むのは初めてだなと思いながら、口の端にヨダレを垂らしているバルレルの無防備な様子にアレスは苦笑した。
「こんな所で寝てたら風邪ひくわよ」
「…悪魔が風邪なんかひくかよ」
バルレルが悪態をつく。