第5章 ラリマーの調和
指で石を撫でる。
何故だか、大丈夫だ、という根拠のない自信がみなぎってくる。
理詰めで最後の一手まで読みきって大手を決める性格の自分には、今まであり得なかった感覚だ。
「感化されたか」
ベッドに身を沈めれば、彼女の残り香を感じたような気がする。重症だ。
ルヴァイドは石を握り締めたまま、目を閉じる。
脳裏には、アレスの顔。
聖母のように穏やかな微笑み。
しかしレルムで最初に見つめた彼女の瞳は、絶対的な力を感じさせる強い眼差しだった。
(俺の剣をあの細腕で受け止めたのだ。ただの娘ではないのかも知れぬな)
『ルヴァイド――』
澄んだ声。柔らかい身体。紫水晶のような瞳。
(早くまた俺の名を呼んでくれ)
アレス、と小さく呟いて、一時の眠りへと沈んでいった。
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