第5章 ラリマーの調和
ルヴァイドは聞いているのかいないのか、頬杖をついてイオスの視線から目を反らしていた。
その瞳はどこか遠くを見ている。
「ルヴァイド様」
イオスは口調を強めた。
ルヴァイドが横目でイオスを見やる、その視線は鋭い。
「アレスを拐いましょうか」
「…拐ってどうする」
「僕が言います、ルヴァイド様の支えになって欲しいって」
優しい彼女の事だ。
きっと帰ってきてくれる。
ルヴァイドは椅子から立ち上がり小さく首を回すと、イオスに背を向けて後ろで手を組んだ。
「お前の言いたい事は分かった」
心配されているという現状に、情けないとも思う反面、嬉しくも思うルヴァイド。
「ただ、我々側からアレスに接触するのは彼女の立場を無くしかねない」
俺達はアレスの出方を伺った方が良い。