第1章 カルセドニーの導き
「なんじゃ、お前さんたちか」
アグラバインが扉を開けると、そこには眼鏡を掛けた青年。その顔に見覚えがあるのか、アグラバインは目元の表情を変えた。
眼鏡の青年の後ろに控えていた大柄な男が、白い歯を見せて笑う。
「さっきはどーも」
「ご迷惑おかけします…」
頭を垂れた巫女の黒髪が、その肩からサラリと落ちる。
「とりあえず中に入りなさい」
アグラバインが家の中に招き入れれば、リビングは一気に人口密度が上がった。
「へぇ、意外と大きい家なんだな」
「失礼だぞ、マグナ」
先程の眼鏡の青年にたしなめられたマグナが、黙して傍観していたアレスの視線に気付いた。
「きみは…?」
アレスは、その場の視線を全て当てられて、小さく会釈をする。