第1章 カルセドニーの導き
アグラバインと名乗った人物の風貌は、筋骨粒々の肉体で、髭や伸ばした髪がさながら獅子のようである。
見つめてくるその眼光鋭さはただの樵ではないなと、アレスは心中で独りごちた。
「すみません、しばらくご厄介になります」
そうアレスが頭を下げると、アグラバインは顔に似合わぬ微笑みを浮かべた。
「構わんよ。ロッカがお前さんの事をえらく気に入っておったしな。まぁ、困った時はお互い様じゃ」
「そう言って頂けると助かります」
それに今日はもう一組泊まり客が入っておる。そっちは大所帯らしいから、騒がしくなるのぉ。
アグラバインが溜め息を一つ溢すと同時に、玄関をノックする音が響いた。
「失礼します、ロッカさんの紹介で参った旅の者ですが…」
すました声が耳に届く。