第4章 アマゾナイトの希望
炎の中で命拾いしたのも、陣営に連れていかれたのも、キスをされたことも全て彼の気紛れに過ぎない。
戦場とは、人間の感覚を狂わせる。
彼は自分に、抑圧された欲求を擦り付けてきてるのだ。
あれだけの告白をしてきても、いざ手元から離れれば案外忘れ去られてしまうに違いない。
「…このまま逃げてしまおうか」
レンガの敷き詰められた足下を見ながら、思わず零れ出たセリフを自ら否定した。
「私には、やるべき事があるじゃないの」
独り言をブツブツ呟いている彼女を不信にみやる通行人を無視して、アレスは再び歩き始める。
レイムという男から提示されたゲームに勝つ為に、一時ルヴァイドの傍にいよう。
何よりあの男は危険だ。ルヴァイドがあの男の邪気に対抗できるようになるまで見守ろう。