第4章 アマゾナイトの希望
言ってからアレスは、そんな場合じゃなかったと首を振る。
行き交う人の合間を抜けながら、思い出すのはルヴァイドの顔。
無表情の中に隠してはいるものの、あれは熱くなりやすい。普段は頑なに自らを律している分、箍が外れると手に負えないタイプだ。
「…怒られるだろうなぁ」
起きたら姿が見えなかった事を心配して探し回ってくれたルヴァイド。
そんな彼に一言もなく単独行動をしたのは不味かったかもしれない。いや、非常に不味かった。
ふと立ち止まって自分の唇に指を這わす。
「嫁候補、かぁ」
イオスや他の兵士達が自分をそう見てるとは露ほどにも思ってなかったが、総司令官の馬に乗ってやって来た女はなるほど、そう見えるかもしれない。
すべてはルヴァイドの気紛れだというのに。