第4章 再来
それから一週間は
彼は姿を見せる事がなかったので
何事もなく静かに過ぎた
そう
いつもの退屈な毎日だった
でも
私は店の子たちに芸能人に会ったと噂されて
どうだったとか聞かれて
いちいち答えるのにめんどくさく
店を辞めようかと思い始めていたのだ
そんな一週間後の夜中に
二人の客が入って来た
私はいつものように
客席に水を持っていくと
彼がもう一人の男と
楽しそうに笑っていたのだ
「いらっしゃいませ....」
知らない顔で水を出すと
彼は私の顔を見て嬉しそうに
大倉「こんばんは」
「どうも....」
二人の間に気まずい空気が流れ始めたので
「ご注文がお決まりになりましたら
お呼びください」
私はそう告げると
その席から離れよとした時だった
大倉『なぁ、イメージ通りやろ?』
安田『そうやなぁ』
二人が私を見ながらコソコソ話していた
何かと思ったが関わりたくもないし
言われる事になれていたから
私は気にせずに仕事に戻った
彼の席にはそれから行くことはなかった
他の同僚が私を押しのけて
オーダーを取りに行ったりしていたから
私はそれで良かった
煩わしいのは本当に勘弁だったから
仕事中の私の目に時々入る彼は
一緒の人と楽しそうに食事をしていた
豪快に笑う人だと思った
毎日が楽しいんだろなぁ
あんなに素直に笑えるのだから
私には無理な世界だったが
彼は一時間ほど食事をすると出て行った
窓から帰る姿を
私は何故か見送っていた
私は、ただの店の人
この前は鍵を拾っただけ....
私は何度も心で
その言葉を繰り返していた
彼に接客をして少しだけ話をして
調子乗っている
同僚のようになりたくなかった
私は、自分を知っている