第23章 男の会話
彼の表情は暗くなっていた
彼は辛そうに安田さんに伝えた
大倉「みんなには迷惑はかけられんから....」
その言葉を聞いた安田さんは
身体を運転席の方に持って行くと
腕を伸ばして自分のスマホを彼に見せた
安田「みんな協力をするって!」
驚いた彼は安田さんのスマホを取り上げると
メールを見た
しかし運転中なので、急いで目線を外すと
大倉「お前、今日ずっと連絡取ってたん?」
ゆっくりと安田さんは身体を席に戻すと
安田「みんな、めっさ心配してるやで
口には出さんけどさ」
彼は微笑んでいたが
目元が潤んでいた
安田「負けんなよ....」
大倉「おん、ありがとう....」
そう言うと彼はスマホを返すのを
安田さんは受け取りながら
安田「俺らは、いつでも力になるからな」
大倉「あのなぁ、実は俺....
まだ、片思いやねん....」
言葉に安田さんは驚いていた
安田「う、嘘やろ?」
大倉「ほんまや、でも....」
彼は小さく笑っていたが
何度も渋滞で止まる車のハンドルを握りながら
遠くの景色を見ていた
何か決心を話すように
安田「でも?」
安田さんは催促するように訊ねる
大倉「どうしても諦めきれんねんなぁ
相手に忘れられん男がさぁ
胸におっても....」
安田「.......」
大倉「今日も告ったけど、アカンかったわ」
彼は苦笑いしながら言った
安田「お前がなぁ.....」
安田さんも彼の言葉に苦笑いしていた
大倉「ほんまに、自分を持ってて強敵な女なん」
彼は眠ってる私の顔を見た
安田「自分を持っててか....
それで、アイドルを振るとはねぇ」
二人は何故か笑っていた
ただ渋滞のランプを見つめながら
お互いに笑っていたのだ
私の知らない時間に男同士の話をしていたようだ
彼の気持ちをちゃんと私が知るのは
まだまだ先の事だった
私を彼は色んな人の協力の元
色んな人を巻き込んで
自分たちの運命を奏で始めていたのだ