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モノグラム

第3章 傷




 私が店に着くと

店は開いた所でお客さんも数人で

客席もガラガラなのに

入口の一室のお客が待つソファーに

サングラス姿で男が座っていた



一目で彼だと分かったので

直ぐに彼の元に歩いて行くと

声を掛けた


「お待たせしてすいませんでした」


大倉「......」


彼は何も言わなかった

待たされすぎで怒っているのかと思ったが

それよりも様子がおかしい



私は疑問に思い顔を覗き込むと

彼はまた寝ていたのだ



私は呆れながらため息を付くと

彼の身体を少し揺り動かし


「あのぉ、すいません」


少し大きめの声で話しかけた


すると彼はやっと目を覚まして

辺りを見渡すと驚いたように私を見た


そして状況が呑み込めないのか

ぼーとした様子だった



「鍵を持ってきましたけど....」


私がそう言いながら

持っている鍵を彼の手に強引に渡すと

やっと理解したのか身体を座りなおして


大倉「あ、ありがとう」


「いいえ、店が閉まった後だったので

私が預かっていました」


彼は私の言葉を聞きながら

掌の鍵を急いでポケットに直した


大倉「家に帰ったらなくてさぁ

ここかと思ってね

本当に迷惑をかけました」


にっこりと微笑んで彼は言った

でも私は腹立っているのもあったので


「差し出がましいですが

落としたら分かるように

キーホルダーなんか付けたらどうすか?」


その言葉を聞いて彼は直した鍵を

再び取り出しながら見つめ


大倉「これ、安田の鍵なん」


その言葉に私は驚いた


大倉「アイツの鍵を預かってたら

落としてもうてな」


「人の鍵を落としていたんですか?」


私がそう言うと彼は人差し指を立てて

自分の唇の前に持っていくと


大倉「しーーーーーっ」


そう言いながら子供みたいに笑ったのだった


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