第6章 旅行の時間
~烏間惟臣 side~
『今日、村松の家に泊まってもいいかな?寺坂たちと一緒です』
そう友喜から連絡が来て、俺は少し動揺した。寺坂くんたちは、クラス内でも特に浮いた生徒たちだ。正直、あまり素行も良くない。だから、友喜が彼らと親しい間柄だというのが、にわかに信じ難かった。だが、E組でも上手くやれているようなので、俺は
『分かった』
と送った。すると、数分もせず携帯が鳴る。
『ありがとう叔父さん! 夕食は冷蔵庫に作り置きがあるので、チンして食べて! 明日には帰ります』
俺はその返信を見て、携帯を閉じた。やけに静かに感じる部屋は、ひやりと冷たかった。
「………はぁ…今日はダメだな。少し仮眠を取ろう」
俺は洗った皿を片付けながら、ため息をついた。こんなんで、修学旅行であいつを暗殺することができるのだろうか…。
「……風呂に入るか」
浴室に向かう途中、友喜の部屋がちらりと見えた。綺麗に整頓された友喜らしい部屋だと思った。俺は友喜の部屋を出て、浴室へと向かった。
「…あの子が来てから、もうすぐ10年が経つのか」
そして、昨日のことがまた頭をよぎる。…もう俺には、あの子がいない部屋には住めないようだ。しかし、いつもふと思うのだ。俺ではなく、もっと適任がいたのではないか…と。防衛省に務めている俺は、家に帰ってこれないことも多いし、その分あの子の負担になる。それに、俺はあの子の扶養者にはなれても、親代わりにはなれない。それに、俺は…恐らくあの子のことを……
「お、叔父さん!?!?」
「………なんだ? ………ん?」
友喜が俺のことを呼び、俺は足を止めた。そして気づけば、俺は友喜とシャワーに打たれていた。
「…………なんでここにいる?」
「え…俺が先に入ってたんだけ……ど……」
ふむ。どうやら、考え事に夢中で聞いてなかったようだ。俺のこの癖は昔から直らない。だが、俺はこのまま風呂に入ってしまおうかと思った。どうせ、濡れてしまっているのだし、それに男二人。入ってしまっても……。しかし、友喜の顔を見た瞬間、俺の考えは変わった。
「………悪かった。すぐ出る」
友喜の真っ赤になった顔と恥ずかしそうに顔を背ける姿が、しばらく頭から離れなかった。