第4章 体育の時間
「これ、友喜の荷物とあんたの荷物。今日はその子連れて帰りなさい」
イリーナがいつの間にか保健室に入ってきて言った。
「…………すまん助かる。」
俺はお礼を言い、まだ意識のない友喜をおぶった。先程も思ったが、こいつは男とは思えないぐらい軽く細かった。
「……………叔父さん?」
車の中で目が覚めたようだ。
「お前倒れたんだ。体調管理はちゃんとしろ。」
「……………ごめんなさい」
「寝ておけ。何か食べたいものはあるか?」
そう言うと、友喜は首を振って目を閉じた。
家に着いて、まずは熱を計る。
「38.6度か………上がったな」
俺は氷枕を友喜に与え、お粥を作りに調理場へ行った。
「………………叔父さん?」
しばらくして友喜が起きてきた。まだ足元がおぼつかないようでふらふらしている。俺は友喜を抱き上げ、
「お粥ができた。食べろ。」
と友喜を部屋へと戻す。
「…………食欲ない」
と中々食べようとしない姿は小さい頃と変わりなかった。
「食べろ。」
スプーンですくって、口元へ持っていってやるとしぶしぶながら口へ含む。そしてようやく全部食べた。
「ほら、体が拭いてやるから後ろ向け。」
その後、熱でかいた汗を拭くため服を脱がせる。
「…………んっ」
冷たいのか顔をしかめる。俺は我慢しろと言い、体を拭く。白い肌に帯びる熱い熱と度々聞こえる友喜の色っぽい声は俺の心を揺れ動かした。
「それじゃあ、ゆっくり寝ろ。」
体も拭き終わり、俺は部屋から出ようとすると、
「…………寝るまでここにいてよ」
と俺の袖をつかむ。その目は熱のせいか涙があった。俺は仕事のことを頭に浮かべて、
「寝るまでな」
と微笑んだ。するとにこっと笑い友喜は目を閉じた。
しばらくしてほっとしたのか寝息が聞こえた。俺が部屋から出ようとしたとき、
「…………叔父さん…………」
と友喜が呼んだ。振り返ったが、どうやら寝言だったようだ。だが目からは涙が零れていた。どんな夢を見ているのか分からないが、友喜悲しそうな顔をした。思わず俺は友喜の涙をふき、唇にキスをしてしまった。我に返って急いで部屋から出る。
「…………何をしてるんだ俺は」
後に残るのは後悔だけだった。