第5章 ヒルのウサギ
この後、阿伏兎が神威にこの事を報告しに行ってしまった。
この場に残された私は、まだ残っていた資料に目を通す。
それに加え、さっきのシャッター音の事も考えていた。
『…(扉が開く音はしなかったし、ましてや足音もしなかった…こりゃ、)』
バタンッと勢いよく本を閉じる。それと同時に口角が上がった。
相手はどんな人物か。どんなトリックを使ったのか。
どれほどの強さなのか
『(楽しみになってきた!)』
本を本棚に直し、颯爽と資料室を出た。そろそろ游燐に送ったデータが全て解読されて送られるはずだ。
軽やかなメロディーで通信してきたのは游燐だった。
『っと思えば早速、游燐からきたきた…。はいはーい』
«サクラ幹部っ♡資料29の解読できましたょ!»
『(ウザい喋り方は変わんねーな)…うん。で?なに?』
«ぇっとですね♡ 【さほど昔、本の一春雨書翰へ入者を……】は、【10年前、たった一度だけ春雨資料館に侵入できた人物】ってことですね!»
『…その人の名は?』
«………クモ男»
『クモ男?』
«【体制を低く保ち、音も立てずに任務をこなす姿はクモ】から名がつぃたそぅです♡»
『うーん。じゃあそれが10年前ってことはクモ男って今回の件と同一人物が高いね…』
«そぅですね…。念のため、もっと詳しく調べてみます♡»
『頼むよ』
«きゃっ♡サクラ幹部に任されちゃっ【ブチッッ】
『…ふぅ。…………クモ男、ねェ。』