第5章 「白雪姫より口笛吹いて働こう」初演奏と遡の始動

男と和泉守の率いる部隊、その間は膠着状態が続いていた。

悔しいがもしここで一斉に切りかかったりしたら、土方さんにどのような危害が加わるかもしれなかったからだ。

頭を働かせろ。あの男を倒して無傷で土方さんを奪い返すにはどうすればいい。

しかしいくら考えても答えは出なかった。すると取り囲んでいた一人が男に向かって走り出した。

「土方さんを返せ！！」

それは相棒の国広だった。日頃温和な彼からは想像も出来ないような声を出しながら突進していった。

二人の姿が重なったと同時に鍔迫り合う音が響く。よく見るとあの男は国広の渾身の一撃を片手で防いでいた。

男は力で国広を押しきると小柄な体が中に浮く。それでも国広は男に刃を向けようとしたその瞬間、決着がついた。