第5章 「白雪姫より口笛吹いて働こう」初演奏と遡の始動

転送装置から降りると、現世帰還許可書とかいう名前の書類を提出し、本丸から送られてきている修理楽器(ファゴット、クラリネット、トロンボーン)を窓口で受け取った。

楽器が多すぎて一人で持ち運べなかったので台車を借りて外に出る。そこにはいつも見ている松江の市街地が広がっていた。

(たった一日しか離れてないのに、懐かしく感じるなぁ)

少しの間感慨に耽っていると目の前にジャンボタクシーが一台やって来た。

どうやら城護先生が手配してくれたらしい。心の中でお礼を言いながら楽器をタクシーに入れた。

城護先生のよく行く楽器店「あだかえ楽器」は市役所から離れた、塩見縄手の近くにあるらしい。だが自分はこの楽器店を知らない、大学で忙しい時期に出来たのだろうか。